第40章 風の呼ぶ声
「__ってことがあってよ。いやぁあれは天性の才能ってヤツだな」
「見聞色の才か」
書類片手に船長室へやってきたサッチの報告に白ひげは低く呟く。
見聞色の覇気とは気配や意思、命の波動を感じ取る力。
優れた者は数マイル先のことも目の前で起きている出来事のように知ることが出来る。
基本的に覇気というのは長い修練の末初めて覚醒するものだが、ごく稀に天性に備わっている者もいる。
「覇気は全ての人間に備わってるって話だが、異世界の民にも当てはまるんだな」
「悪魔の実の影響もあるんだろい。風は見聞色と相性がいい。カゼカゼの実の能力を使いこなせるようになってきたことで覚醒したんだろうな」
尤も本人はまるで気付いていないようだが。
「マルコー。全員に伝え終わったよ。昼までにって言っといたからみんなもう来るんじゃないかな」
ドアを開け入ってきたのは噂の当人。
一気に集まる視線にえ、なに?と狼狽える水琴にマルコは再確認した。
「……全員か?」
「うん、八人全員。ダメだった?」
マルコが水琴に頼んでまだ三十分程しか経過していない。
もちろんマルコも水琴も、誰がどこにいるかなど把握している訳では無い。
「いや、助かったよい」
正直に言って今日中に伝えられれば十分と思っていた。それがまさか一時間も掛からず済んでしまうとは。
「その才、燻らせておくには惜しいな」
「何が?さいって?」
「水琴。お前ベイに会うつもりはねェか」
白ひげの言葉に首を傾げた水琴だったがベイの名を聞き目を輝かせた。
「ベイって、もしかしてホワイティ・ベイ?”氷の魔女”の?」
「よく知ってるじゃねェか」
「親父さんの数少ない娘って聞いて、いつか会ってみたかったんだ」
「なら話は早い。良い機会だ、色々教えてもらえ」
まさか覇気のことだとは思っていない水琴は楽しそうに返事をする。
こうして白ひげ海賊団傘下、ホワイティ・ベイとの会合が執り行われることとなった。