第39章 力の重さ
透き通った瓶を弾く音が響く。
いつもの場所で賑やかにしているのはいつか見た二人。
「どーよハルタ!あの狙いはなかなかじゃない?」
「なんか水琴やけに張り切ってない?」
「サボってた分取り返さないといけないしね」
「おぉーい、水琴」
声を掛けられ振り向けば困った顔の雑用仲間がマストの上を指さしていた。
「悪い、引っかかっちまった」
取れるか?と尋ねられ答えの代わりに水琴は風を生む。
小さな風はくるくるとタオルを巻き込み仲間のクルーの元へ飛ぶ。
「うわっぷ」
「気を付けてね」
「サンキュ」
顔にかかったタオルを挨拶代わりに振りながらクルーはカゴを抱え去っていった。
「器用だねぇ」
「こんなのまだまだ」
「へー。目標は?」
「うぅん……エース?」
「そりゃまた大きく出たね」
「だって、仰ぐなら高い方がいいでしょう?」
空を見上げる。今日も雲ひとつない空で太陽が輝いている。
「せっかく待っててくれてるんだから、早く追いつかないとね」
風が吹く。
海の香りを含んだ風が大きく舞い上がり船を運ぶ。
今日も白い鯨の上で、軽やかに風は舞う。