第3章 初めての島
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春島の海域を出てしばらく経ったモビーディックの廊下をエースはぷらぷらと歩く。
その表情はマルコに絞られげっそりとしていた。
騒動でログがたまる前に出航となってしまったせいで、急遽今後の航路の見直しをしなければいけなくなったのだから当然と言えば当然だが、あんなに切れなくてもいいと思う。とエースは鬼のようなマルコの表情を思い出す。
ふと、ポケットに入れていた手を取り出し眺める。
「………」
ぼ、と小さくエースの手に炎が灯った。
エースが思い描いた通りにちらつく炎に首を傾げる。
「…何だったんだろうな」
実を食ったばかりでコントロールが下手だった頃ならばいざ知らず。
思ったように炎が操れないということなどここ最近全く無かったというのに。
原因を探るがよく分からず。エースは考えることをやめた。
目の前には医務室。
ノックをして入ればベッドに腰掛ける水琴。
その足首には痛々しく包帯が巻かれている。
「足平気か?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
水琴の横に腰かける。
「…ごめん」
前方に視線をやったままエースはぽつりと呟く。
「え……?」
「怖かったろ」
よく考えれば、今まで海賊とは無縁だった水琴にとってあの逃走劇は恐怖でしかなかっただろう。
__水琴にとっちゃ、悪魔の実も海賊も未知のもんなんだよい。
__てめェは、もっと慎重になりやがれ!
マルコに言われ、初めて気付いたその事実をエースはずっと気にしていた。