第39章 力の重さ
___あっ
小さな手から風船がするりと抜け出る。
鮮やかな赤い風船は瞬く間に青い空へと上り小さくなっていった。
___あら、残念ねぇ
もう片方の手を握ってくれていたシスターが、空を見上げる水琴の視線を追い残念そうに呟いた。
___水琴もお空を飛べたらよかったのに
___そうね、そうしたら取りに行けたのにね
___ううん、そうじゃなくて。お空を飛べたら、風船さんとお空で遊べるでしょう?
___あら……
___あーあ。お空飛べたらなぁ
空高く消えていく風船がいつの間にか新たな家族の姿になる。
あの空に、自分もいきたい。
彼らに誇れる自分になりたい。
手に入れた力の大きさに脅え、縮こまっている幼い子どものままでは、いたくない。
手を伸ばす。すらりと伸びた指先に陽の光が透けて見える。
遮るものなく降り注ぐ太陽の光に、水琴は眩しそうに目を細めた。