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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第39章 力の重さ






 生まれた風の奔流は水琴を、子どもを包み込む。

 落下の勢いを殺し、子どもを抱きしめた水琴は静かに地へ降り立った。
 そのまま足の力が抜けたように子どもと共に座り込む。


 「リロイ!」
 「ママぁ!!」


 人垣から女性が飛び出してくるのを見つけ、子どもがぱっと駆けていく。
 あれだけ走れるのなら怪我の心配はないだろう。しっかりと抱き合う母子に水琴は安堵の息を吐く。


 「おい、無事か!」
 「あんた、能力者だったのか」


 上から急いで下りてきたのだろう。先程水琴に声を掛けてきた男と他数人が足早に水琴に近寄ってきた。

 「お嬢さんのおかげで無事に助けられた。ありがとうよ」
 「いえ、上手くいって良かったです」

 心の底からそう思い差し出された手を握る。
 立ち上がろうとして、気がついた。

 「……すみません、少し手を貸してもらっていいでしょうか」
 「どうした、怪我でもしたか?」
 「いえ……腰が、抜けました」

 情けなく眉を下げながらそう言えば苦笑し男は肩を貸してくれる。

 「大丈夫か?しっかりな」
 「お手数おかけします……」
 「いいっていいって。命の恩人だ、これくらいはやらせてくれ」

 「あんた、見慣れない顔と思ったらもしかして白ひげさんのとこのクルーか?」

 様子を窺っていた男の一人がそう尋ねてきた。

 「はい」
 「そうかそうか!白ひげさんのところのか!道理で度胸があると思った」
 「今港に人をやるから、少し休んでいきな」

 白ひげ海賊団と知り周りを囲んでいた人々はわいわいと騒ぎ出す。
 その親密な笑顔を見て、彼らがこの島の人たちに親しまれていることを知り水琴は頬を弛めた。


 ……少しは、親父さんの役に立てたかな


 どっと疲労が水琴を襲う。
 瞼が重くて目を開けていられない。


 少しだけいいかな?少しだけ……


 何やら耳元で騒ぐ男の声を最後に、水琴は夢の世界へと引きずられていった。


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