第39章 力の重さ
それから更に数日。
白ひげ海賊団はとある島に上陸していた。
この島は領土のためあまり警戒する必要は無い。久しぶりに水琴はナースたちと町に出ていた。
気兼ねない女性同士で買い物を楽しむことでここ数日落ちていた気分も上昇してくる。
「水琴はもう少し服を買ったら?いつも同じようなのばかりじゃない」
「だって動きやすくて過ごしやすい服って考えるとどうしても似た感じになっちゃって…」
「ここぞという時の服も持ってないと後悔するわよ」
休憩で立ち寄ったカフェのオープンテラスで話に花を咲かせながら乾いた喉を潤す。
この島の特産だというフルーツティーは甘みの強い香りとは裏腹に爽やかな甘さで、一口で気に入ってしまった。
「私たちはこの後仕事があるから戻らないといけないんだけど、水琴はどうする?」
「うーん、本屋にだけ寄っていこうかなぁ」
「そう、気を付けてね」
会計を済ませ店を出る。
途端に風が水琴の髪を撫でていった。
眼前に広がる水平線を見下ろす。
この港町は段々作りになっており、カフェはその中腹にあった。
登ってくるのは大層骨が折れたがこのオーシャンビューを眺めるためならばこの程度の苦労はなんでもない。
店の前でナースたちと別れ、水琴は更に上を目指す。
港近くの大通りにも本屋はあるが、探索中偶然見つけた古本屋が水琴の感性ピッタリの品揃えで、滞在中は暇さえあればそこに入り浸っていた。
路地にひっそりと埋もれるように佇む小さな建物を目指し、水琴は狭い階段を上がっていく。
「この辺りだったような……」
何度来ても似たような造りのため少し迷う。
確認するよう視線を滑らせ、目印にしていた猫の看板を探していた時だった。
少し上の方で何やら子どもの声がする。
ただはしゃぎ騒いでいるだけならばいいが、その声音はどこか焦りが混じっていた。
どうしたのかとつい好奇心とお節介から上段を見上げる。