第39章 力の重さ
「あーあ、すぐ終わっちゃったや」
「準備運動にもなりゃしねェなァ」
「二人ともお疲れ様」
息一つ乱すことなく武器をしまう二人に駆け寄る。
「どうしようこれ…」
横たわる遺骸に途方に暮れる。
「放っておけばいいんじゃない?必要なら集落の人達がバラすでしょ」
「毛皮とか爪とか再利用するかもしれねェしなァ」
「そう?なら……」
行こっか、と続けようとした水琴の目に異様なものが映った。
”それ”は音もなくハルタの背後に近づき__
「っハルタ!あぶな__」
全てを言い切る前にそれはハルタの足に絡まり勢いよくその身体を引く。
「う、わ?!」
足から宙吊りとなったハルタは自身を拘束するそれをようやく視界に収めた。
「蔓……?」
ただの蔓では無い。女性の二の腕ほどもあろう太さの蔓が自由自在に蠢き獲物を探す。
「何これ?!」
「食虫植物……いや、食人か?」
「悠長に言ってる場合?!」
「まーまー。これくらい剣で簡単に…」
剣を抜こうとしたハルタの身体を蔓があっという間に簀巻きにする。
「あ」
「あ、じゃなくて!もーのんびりしてるからぁぁああ!」
そうこうしている間に本体が姿を現した。
何故か自律歩行をするそれは例えるならかぼちゃ頭。
頭のてっぺんには四方に大きく開く部位があり、獲物を飲み込もうと消化液を滴らせていた。
「ちっ、銃じゃあちっと弱いか」
すぐさま蔓に狙いを定め撃ちぬくが太さとその量により行動不能にするには及ばない。
このままではハルタも一飲みにされてしまうだろう。
水琴は覚悟を決め、震える手を前に突き出した。