第39章 力の重さ
滞在に選んだ浜から一番近いその集落は本当に小さなものだった。
人口は百人前後。自然と溶け合うように存在するそこは水琴の足でもあっという間に一周することが出来るだろう。
こんなに少なくて人口を維持できるのだろうかと思ったが、島の各地に点在する他の集落と交流があり、婚姻なども行われているため血が濃くなりすぎる心配はないそうだ。
突然現れた海賊船に動揺する彼らに敵ではないことを示すため、水琴たちは少人数で挨拶に赴く。
無駄な諍いは避けるのが利口だ。
心理的な圧迫を軽減するため、いつからかこの挨拶は水琴の仕事となっていた。
誰だって屈強な海賊に来られるよりも、物腰の柔らかな女性の方が精神的にいいだろう。
実際一般人にしか見えない水琴が挨拶に行くことによって集落の者たちもいささか安心していた様子だった。
ひと仕事終えた水琴は護衛役として同行していたハルタとイゾウと共に船へ戻ろうと森の中を歩く。
「ログ溜まるまで三日かぁ」
「やっぱサバイバルマッチやろうよ!暇だし」
「だから嫌だって。やるなら他の人とやってよ」
「えー。じゃあエースでも誘おっかなぁ」
「それは止めておけ。火事になるのが目に見えてらァ」
「言えてる」
「えーつまんないの」
三人でお喋りに興じながら歩を進めていた水琴だが、不意にイゾウが足を止めたのに気付き自身もまた立ち止まった。