第3章 初めての島
「エ…エースさん……」
「水琴、ちょっと待ってろ」
すぐ終わる、と立ち上がり海賊の方へ向かう。
「ちょ、駄目ですって!」
水琴の制止の声にも足を止めることなく、いまだ暴れる海賊に近づく。
「おい」
「あァ……?っ!!」
振り返った海賊の頬にエースの拳がめり込んだ。
エースよりもふた周り以上大きい海賊がいとも簡単に空を舞い、先程ぶつかった壁を粉々に吹き飛ばす。
あれは保険が降りるんだろうか、とあまりの出来事に水琴はどうでもいいことを考えていた。
現実逃避ともいう。
「な、なんだてめェ……!」
突然現れた乱入者にもう一人の海賊が武器を構える。
ゆらりと体勢を立て直すエースの背中にはどす黒い殺気。
まさか、私が怪我したから…?
どきんと心臓が跳ねた。
「誰がひよっこだおらーーーー!!!!!!」
容赦ないエースの蹴りが海賊へめり込む。
あ、そっちでしたか。
少しときめいちゃった私恥ずかしい。
…って、だから駄目だって!!
「エースさん!火、火!!」
「お?」
気が付けば周囲に炎が揺れ始めている様子にはっとする。
ここで能力を使えば完全にばれる。
「エース……?」
「おい、あの炎ってもしかして…」
「火拳……?」
あ、遅かったですね、はい。
私もなんで名前口走っちゃったんだろう。
「おい、何があった!」
「これはどういうことだ!!」
騒ぎを聞きつけたのか海兵が集まる音がする。
「あ、やべ」
「やべ、じゃないですよーー!」
暴れてすっきりしたのか、冷静になったエースがぽつりと呟く。
「よし、水琴」
「はい?」
「逃げるぞ!!」
ぐいっと腰を引き寄せられ、担がれたと思ったら跳躍。
「んきゃぁぁあああ??!!」
「ちょっと我慢しろよ!」
急に襲った浮遊感に思い切り叫びエースにしがみつく。
不安定さを感じさせず、エースは軽々と屋根に飛び移り駆けた。
「なんだこれは!」
「海賊だ!早く追え!!」
ばらばらと追ってくるのをエースの肩越しに目に入れ、嘆く。