第3章 初めての島
「あー、切っちゃいました」
「何やってんだよ」
段々と流れ落ちてくる血をどうしようかと眺めていると不意にエースが手を取った。
そして当然のように口元に持っていく。
ペロ。
「?!?!?!?!」
「これくらいなら舐めときゃ治るだろ。…ってどうした?」
「いやいやいやいや!どうしたって、エースさん何して……!」
「何って……?!?!」
真っ赤になった水琴の顔を見て自分がしたことを悟ったらしい。
自覚した途端に水琴以上に顔が真っ赤になっていく。
「い、いや違ェぞ?!これは別に、ただ治療として…!」
「わ、分かってます、分かってますから放して……」
ぱ、と放された手を自身に引き寄せる。綺麗に舐めとられた傷口からは再び血が溢れ始めたが、まさか舐めるわけにもいかない。
ばっ!と目の前に差し出されたのはよれよれの絆創膏。
「……使えよ」
どうやらポーチに突っ込まれたままになっていたらしい。
よく持ってたなぁと思いつつ、有り難く受け取り指に巻く。
「……ありがとうございました」
「…帰ったら、消毒しとけよ」
***
「………」
「………」
気まずい。
あの後なんだか元の空気に戻れず、足早に植物園を出た二人はメイン通りへ戻ってきていた。
しかしさっき歩いていたように気安い会話が飛び交うことはなく、やや距離をとって静かに歩く。
「…あ、エースさんアイス売ってますよ!食べましょうよ」
「お、おう…」
気まずい空気を壊すように、人だかりの出来た屋台を見つけ、駆け足で近寄りながらエースを手招く。
ぎこちないながらも返事をしたエースがゆっくりと近づいてくる。
「おじさーん、三段アイス!」
「……は?」
水琴の注文にエースが驚き目を丸くする。
「え、駄目ですか三段」
「いや、ダメっていうか、お前腹壊すぞそれ」
「大丈夫です!アイスは別腹なんです!」
「なんだそれ!」
ぐっと拳を握る水琴にぶはっと噴き出すエース。
先ほどまでの気まずい空気が薄れていく。
良かった……
内心同じことを思い、二人はそれぞれの味の感想を言い合う。