第3章 初めての島
「あ、すいません水お代わり…」
ふと視線を外した瞬間だった。
「ぐがー」
「…ぎゃー!」
思わず素で叫んでしまった。
あの一瞬で食事に顔を突っ込んでいる知人を見たら誰だって叫ぶと思う。
「ちょ、エースさん!起きて!」
「……お、悪ィ、寝てた」
揺さぶれば目を覚まし食事を再開する。顔中ご飯まみれになっているのをおしぼりで拭いてやる。
食事中に突然寝る癖があるのは知ってたけど、目の前でやられると心臓に悪い。
食事がご飯ものでよかったと思う。これがスープとかカレーとか飛び散る系だったら悲惨なことになってたところだ。
「悪かったな、びっくりしたろ?」
なんか眠くなるんだよなー、とけらけらと笑う。
えぇ、存じております。
無事に食事を終え散策を開始する。
「しかしさすが観光で栄えた島。人多いな」
「えぇ。でもすっごく楽しいです!」
「異世界の情報はゼロだけどな」
「ですねー。でもまぁ、何とかなりますよ」
「ほんとポジティブだよなお前」
土産物屋を覗いたり、観光スポットに寄ったりしながら異世界の情報を探したが思ったような情報は得られなかった。
まぁ、井戸のあったあの島でさえあの噂以上の情報はなかったのだ。そんな簡単に見つかるとは思っていない。
気分転換とやってきたのは中心街から少し離れた植物園。
春島ということもあって、たくさんの植物が咲き誇っている。
「だけど意外だなあいつ植物好きなのか…」
「えっと、ウィリーさんでしたっけ。なんか真剣に鉢植え見てましたね」
植物園の一角でじっくりと一つ一つの鉢植えを見ていた強面の整備士を思い出す。
あまりの真剣な表情にいちゃもんをつけられるんじゃないかと店員が怯えていたのが少し不憫だった。
「でも船で植物育てるのも良さそうですよね。緑って心落ち着きますし」
「そうだなー。畑で野菜作るのも良いな!」
「あ、良いですねー!って、痛っ」
話に夢中で手元が疎かになっていた水琴は不意の痛みに腕を引く。
見れば指先にじんわりと赤い玉が浮かんでいた。