第34章 不穏な影
少なくとも白ひげは、傘下だろうとモビーディックのクルーと同じように家族だと思っている。
下種な海賊もいたものね、と水琴が呟くとがちゃりと突き付けられた銃が鳴った。
「おい、自分の立場分かってんだろうな…?」
「っ、」
「おい、そいつは関係ねェだろ。離せ!」
「関係なくはねぇな。こいつも白ひげのクルーだろう。仇討じゃねぇが、ここで火拳を討てば俺の株は一気に上がる。」
連れて行け、という声に水琴の腕をつかみ男たちはその場を去ろうとする。
「いや、離して!」
「水琴!」
水琴の声にエースは右手に炎をまとい、振り上げようと足に力を込めた。
その途端響く銃声。
当たるはずのないその衝撃に、エースは思わず膝をついた。
エース!!と叫ぶ水琴の声が聞こえる。
「…っ、んな……?」
茫然と血が流れる身体を見る。撃たれた傷口からはとめどなく血があふれ、それと共に力も抜けていく感じがした。
その感じは、他でも味わったことがある。
そう、誤って海に落ちた時……
「海楼石の弾だ。ざまあねぇなぁ火拳…?」
「てめ、なんでこんなもの…」
「ルートなんていくらでもあるんだぜ」
見下ろす男が遠慮なく銃をエースに向かって振り上げる。
「いい子に眠ってろよ、火拳」
ガッ!!と鈍い音が響き、エースの意識は闇に沈んだ。