第34章 不穏な影
「綺麗……」
「みんなにも見せてやりてェな。……ん?」
「?どうしたの、エース」
不意に遠くを見たエースを水琴は不思議そうに見つめる。しっ、と指を口にあてるとエースは炎を消し身を潜めた。
「エース…?」
「水琴、アレ見ろ」
「見ろって言ったってこれじゃあ真っ暗で……」
困惑の声で呟く水琴も次第に目が慣れてきたのか、ヒカリゴケに照らされた周囲を見ようと身を乗り出す気配がした。
「……!!」
エースが示したものを見つけたのだろう。背後で水琴が息を呑む。
「あれ…海賊船?」
水琴の視界に入ったのはモビーディック程ではないが大きな船と、はためくジョリーロジャー。
「どこの海賊か分かる?」
「いや…でも、なんか見たことあるような…」
思いだそうと首をひねるが、出てこないと悟るとエースは水琴を振り返った。
「まァいい。見つかる前に戻るぞ、水琴」
「うん」
無駄な争いは避けるに限る。加えて今は水琴が一緒だ。
はやいとこ抜け出して、親父に報告しないといけない。
まぁ、もう知っているかもしれないが。