第34章 不穏な影
「きゃっほー!」
「おら、急カーブ!!」
「あはは!やばい、エース落ちる!!」
「しっかりつかまってろよー!」
モビーディックから離れた海面を島に沿ってストライカーは進んでいた。
普段は味わえない速度に水琴も楽しげに声を上げる。
「随分来たなァ。あと少しで半分か?」
大体島の大きさと時間を計算し、エースは自分たちの位置を計る。
まだ時間には余裕があるだろ、と見切りをつけるとエースは速度をやや緩めた。
「あ、エースエース!」
そんなエースに水琴が楽し気に声を掛ける。
「なんだよ」
「あれ」
指さす方を見ると、岩陰に覗く黒々とした穴。
「なんだ、洞窟か?」
「ねぇ、行ってみない?」
「そうだな、いっちょ覗いてみるか」
エースはストライカーをそっと寄せ、穴を覗きこむ。
どうやら結構奥に続いているようだ。入口付近は水にぬれているが、奥はしっかりと地面があるようで道が続いている。
「…どうする?」
「どうするってお前…」
顔を見合わせると、そこには同じ答えしかない。
「「行くしかないだろ(よね)」」
冒険心に火がついた二人はストライカーを近くの岩に固定し、上陸した。
そしてその頃。ちょうど一つの海賊船が島へ上陸しようとしていた。