第3章 初めての島
「………」
「どれにすっかなー。どうした?」
「…読めない」
「は?」
「字が分からないんです」
なんて書いてあるんですか?と困った顔でエースに尋ねる。
予想はしていたけれど、全く分からない。
文字の雰囲気はローマ字に似ているが、英語じゃない。
言葉は通じているから、文字も何とかなるんじゃないかなと期待していたが、現実はそうそう甘くないらしい。
「へー。言葉は通じるのに不思議だな」
どれどれ、と一つ一つメニューを読んで説明してくれる。
「…ごめんなさい」
「なんで謝んだよ。読めないのはしょうがねェだろ?」
「だって、手間じゃないですか」
次の島に着くまでに文字の勉強しよう…と落ち込みながら考える水琴の頭にぽすんとエースの手が触れた。
ぽんぽんとあやすように優しく撫でられる。
「気にすんなよ。それに、こういうの懐かしいんだ」
「懐かしい…?」
「あァ。昔、弟に絵本とか読んでやったことがあってさ」
なんか思い出すんだよなァ、と微笑む顔は兄の顔で。
弟ってルフィのことだよね。
ルフィに絵本読んであげたりしてたんだ。
漫画でしか知らない二人の子供時代を思い出す。
最初はつんつんしていたエースが、ルフィに絵本を読んであげている様子を想像する。
…何それ萌える!
「どうした?」
「なんでもないです!」
危うく妄想の世界にいくところだった。
「エースさんにも弟さんいたんですね!」
「おぉ!ルフィって言ってな、三つ年下なんだが、昔はおれの後ばっかついてきやがって……」
ルフィのことになると途端に生き生きと語りだす。
「でな、あいつカナヅチのくせに無理に魚取ろうとして足滑らせて…」
漫画では語られていない様々な話を楽しそうに語る。
それは食事が運ばれてきてからも続いた。
私も私で知らないエピソードをたくさん聞けるのが楽しくて、思わず続きを促してしまう。