第3章 初めての島
物々しい響きに「マルコ!」と後ろから声が掛かった。
「なァ、やっぱこれ着なきゃダメか?あちィんだけど」
振り返れば、珍しく普通の服を着たエースが不満げに口を尖らせている。
姿を見ないと思ったら、着替えに行っていたらしい。
シンプルな白Tシャツに、軽めのベスト。
いつもと違うゆったりしたジーンズにスニーカー。
いつもの鮮やかなテンガロンハットは、黒いハットへと姿を変えている。
………
レアッ!!!
「水琴連れて行くんだから余計な面倒事に巻き込まれるわけにいかねェだろい」
「そうだけどよォ…」
「そういうことだ水琴。エースを護衛に付けるから、ひとまず夕方までには帰って……何してんだよいお前」
「い、いえ…中高生が休日の私服姿にやられる気持ちが大変よく理解できました」
「何言ってんだよいお前」
エースの私服姿に悶えていた私にマルコの冷静な突っ込みが入った。
オタクでごめんなさい。
***
「んじゃ、行くか水琴!」
「はいっ!」
気を取り直して、エースと二人港へ降りる。久しぶりの地面に小さく感動する。
陸を離れていたのはたった三日なのに、もっと長い間陸を踏んでいなかったような感覚に陥る。
「綺麗な街並みですねぇ」
「春島だから過ごしやすいしな。観光が盛んらしいから治安もそんな悪くねェし」
メイン通りを並んで歩きながらのんびりと周囲を見渡す。
どこかヨーロッパ風の建物が並ぶ様子は異国に来たのだと実感する。
「で、どうする?」
「そうですね、まずは……」
一度思案する様子を見せて、二人目を合わせる。
「「腹ごしらえだな」ですね」
同じ答えににんまりと笑う。
「まぁそんなに広い島じゃねェし。出航は明後日だから少しくらいのんびりしたって平気だろ」
「腹が減っては戦は出来ぬっていいますしね!」
「なんだそりゃ?」
「私の国の有名な格言で…」
「へェ!良いこと言うな!」
手近なレストランへ入る。少し時間帯がずれているせいで人はまばらだ。
席へ案内され、注文しようとメニューを開く。
が。