第28章 解放と別離と
「あ、やっぱりこれみたい……っ!?」
移動手段が見つかった安堵から十分に確認することなく後ろを振り返る。
その一瞬の気の緩みがいけなかった。
振り返った視界の隅に不気味な影が映る。
「水琴!!」
エースの声を聞き目線を戻す。
ゆっくりと感じるその瞬間、理解できたのは骨と皮だけになったその腕に握られた冷たく光る銃口だった。
「!!」
「危ないっ!!」
発砲音とともに体に衝撃が走り地面へ転がる。
撃たれた、と思ったが不思議と体に想像するような痛みはなかった。
「ローレン!」
サッチの声でようやく目の前にうずくまるローレンが見える。
「ローレンさん!!」
「火銃!!」
水琴の悲鳴とエースの叫ぶ声が重なる。さらに水琴を襲おうとしていた亡者は途端に紅蓮の炎に呑まれ、ふらふらとよろめきながら泉へと落ちた。
慌てて立ち上がりローレンへ駆け寄る。
「ローレンさん!しっかり!ごめんなさい、私…!」
「大丈夫だ…心配ない」
大丈夫というが傷口を見ればぐっしょりと血液で濡れていた。
白くなっていく顔色や荒くなる息遣いからどう考えても大丈夫なわけがないと水琴は青ざめる。
そんな水琴をあざ笑うように、急に静かだった空間にぞろぞろと亡者が溢れてきた。
「水琴、無事か?!」
「エース、私は平気だけど、ローレンさんが…!」
泣きそうな水琴の声にエースはローレンを見て眉を顰める。
うずくまったままのローレンはそんなエースを見上げ首を振った。
「やっかいな体のおかげで痛みはあるが死にはしない。それよりも水琴さんを早く船に」
「……わかった」
「エース!でも、ローレンさんを…っ」
「言っただろ。まずはお前が帰ることが第一優先だ。マルコの言葉を忘れたか?」