第28章 解放と別離と
洞窟の中はひんやりと冷たく、闇が支配していた。
「これじゃあ走るのも困難だな…エース、頼む」
「おォ」
サッチの一言で即座にぼっ、とエースの炎がともる。
それは洞窟内に散乱していた枯れ木に燃え移り周囲を柔らかく照らした。
そのおかげでようやく視界が確保でき水琴たちは洞窟内を見渡す。
「なるほど、こりゃ案内がなきゃ無理だわな」
目の前に広がるのは迷路だった。
中心の広めの空間から脇に向かっていくつもの道が入り乱れ伸びている。
少し目線を上げれば上の方に伸びる道もあり、下手に突き進めば出入り口まで戻ってこられるかどうかも怪しい。
「ローレンさん、泉はどっちに…?」
「こちらの道だ」
ローレンを先頭に洞窟を慎重に進む。吐く息は白く空気を揺らし、ただエースの生み出す炎だけが唯一の温もりだった。
ちらちらと揺れる炎の陰からゆらりと亡者が現れる。
しかしそれもクルーたちによって確実に葬られていった。
復活する前に足早に先へ進む。
どれくらい進んだだろうか。暗闇しか見えなかった先にうっすらと光が見えた。
焦らずに周囲に警戒しながら通路を出ると、急に広い空間に出た。
「あ……」
全員が広がっても十分すぎる広さの空間の先、ごつごつとした岩場の陰に泉が見える。
近寄ればゆらりと穏やかに波打つ水面がきらきらと僅かな光を反射していた。
水は恐ろしいほど澄んでいるのにその底はうかがい知れない。
「あそこに祠があるのが見えるだろう。あの中に異世界へ通じる入口がある」
ローレンが指さす泉の中央には確かに祠が見えた。
「どうやってあそこまで行くんだ?」
「私が来たときは確か小舟があったはず」
「おいおい百年前の話だろ?乗れるのか?」
「私たちが来る前からずっとあったようだったから歴代の異世界の民が使っていたんだろう。
造りはしっかりしていたから大丈夫なはずだ」
「あ、あれかな?」
きょろきょろとあたりを探せば少し離れたところに小舟の先端と結ばれたロープが見えた。
様子を確かめようと駆け寄る。