第3章 初めての島
あの井戸がある島から出航して三日。
モビーディック号は一つの島に辿り着いた。
あの井戸のあった島を除けば水琴にとっては初めての島だ。
自然気持ちも弾んでくる。
「今日の留守番は五番隊だよい。物資の調達、整備はそれぞれ受け持ちで頼むよい」
がやがやと上陸の準備をしているクルーたちを遠巻きに見つめる。
なんでもこの島は観光業が盛んだそうで、クルーの中にはどうやって入手したのか既にパンフレットを持ってどこへ行こうか考えている者もいる。
意外に観光スポットとか回るんだなぁ。
なんとなく上陸したとき過ごす場所は酒場とか食堂とかそういう所しかないのかと思っていた。
「水琴、ちょっと来いよい」
「なんですか?」
粗方指示を終えたマルコが水琴へ声を掛ける。
近寄れば渡されたのはシンプルな革財布。
「お前にとっちゃ初めての上陸だろい。楽しんで来いよい」
「…え、私も上陸していいんですか?!」
「何言ってんだよい。お前異世界の情報探さないといけねェだろうが」
そうだった。
なんか意外に長閑な航海のせいで少し忘れていた。
「…お前、少し忘れてたろい」
「っ!いやいやいや、そんなことないですよ?私が言いたいのは、一人で上陸してもいいのかなーってことで!」
マルコのじと目に必死で取り繕う。視線が痛い。
「そこは心配しなくてもいいよい。護衛を一人付けてやるよい」
「へ、護衛…?」