第28章 解放と別離と
「各自把握したな?総員持ち場につきやがれ!!」
「「「おうっっ」」」
ばらばらとクルーが散っていく。
水琴も降りる準備をしようと縄梯子へ近づくとローレンもまた降りようと手を掛けていた。
「ローレンさん?」
「私も行こう」
「危険だろ?」
「洞窟の中は入り組んでいて案内がなければ泉まで最短距離でたどり着くことは難しい。
それに、多少の護身術は心得ている」
ちらりと懐から短銃をのぞかせる。
それを確認するとエースは頷いた。
「分かった。案内を頼む」
「あぁ」
「水琴」
エースの手を借りながら入り江へ降り立つ。
ざわり、と空気が揺れた。
生暖かい風が突如生まれ入り江に立つ者たちの頬を撫でる。
それはまるで心臓を鷲掴みされるような薄気味の悪さをそれぞれに感じさせた。
__ぼこり、ぼこり。
静寂に包まれていた入り江に奇妙な音が響く。
音は次第に入り江全体から生じ始め、地面から、水底から、岩の陰から、
不気味な唸り声とともに“ソレ”は姿を現した。
「ひっ……!」
おぞましい姿に水琴は思わず息を呑む。
朽ちかけた身体にぼろぼろの衣服がかろうじてかかる。
月の光でもわかるほど青白い肌に、ただ瞳だけが赤々と不気味な光を宿していた。
「あれが……亡者…」
「どんどん湧き出してやがる。…胸糞わりィねェ」
サッチが唸る。中にはローレンの仲間のように襲われ意図せずして堕ちていった者もいるのだろう。
しかし元々が異世界の民を喰らった末路だと思うと、その多さにぞっとした。
いったい、何人の同胞が犠牲になったのか。