第28章 解放と別離と
祭り最終日。満月が海へ出るモビーディックを静かに照らしていた。
本島を出て数刻、黒い影が水面に現れた。
「あれが……」
甲板に出てずっと前方を見ていた水琴がぽつりと呟く。
「あぁ。あそこがそうだ」
その横でローレンもまた小さく呟く。
段々と大きくなる影は次第に島の様相を表し、全貌が見えてくる。
上陸する入り江には船の残骸や荷物などが散らばっていた。
入り江の端には朽ち果てた船も見える。
その船をローレンは黙って見つめている。
「上陸の準備をするよい。支度しろい」
マルコの声で各自一斉に動き始める。
「おいあんた。泉はどこにある?」
「入り江の奥に洞窟があって、その最奥だ」
「ちっ、めんどくせぇ位置だな。ちなみに亡者ってのは?」
「島の至る所に」
「規模は」
「かつて私たちは五十人ほどで上陸した。結果は全滅だ」
「なるほど」
ローレンの話を聞き思案すると、マルコは隊長を甲板に集める。