第2章 始まり
「良い言葉だった。一般人とは思えねェ胆の座り方だな。気に入った」
「もったいないお言葉です…」
白ひげのあの視線がなければ、きっとあそこまで堂々と告げることはできなかったろう。
不思議な人だ、と改めて四皇の大きさを感じる。
「水琴!」
人の波を縫ってエースがジョッキを片手に現れた。
「うまくいったじゃねェか!言ったろ、大丈夫だって!」
「他人事だと思って簡単に…すごく緊張したんですからね!」
改めてよろしくな、とジョッキを手渡され乾杯する。
「次はこっち来いよ!おれの部下紹介すっから」
「え、でも…」
良いのだろうかと白ひげとマルコの方を見る。
「グララララ!宴は楽しんだ者勝ちだ。行ってきやがれ」
「悪ぃがその煩い奴の世話頼んだよい」
「煩いってなんだよマルコ!」
「そのまんまだよい」
さっさと行け、と手を振られれば一瞬むくれたエースだったがすぐさま気を取り直し水琴の手を取る。
「じゃ、親父またあとでな!行くぞ水琴!」
「え、あ、ちょっと…!
すいません船長さんマルコさん…!失礼します!」
エースにずるずると引きずられ人込みに消えていく少女を静かに見送る。
「しかし、異世界ねェ…グランドラインていうのはほんと常識外れだよい」
「今更だろう。この海も長いこと渡ってきたが、まだまだ奥が深いもんだな」
楽しげに口元を上げ、盃を煽る。
気が付けば闇は深くなり、星が煌めき始めていた。
しかし、新たな仲間を向かい入れた海賊たちの宴は、まだ終わらない。