第2章 始まり
…確かに、船長や隊長たちは自分を受け入れてくれた。
でも、いきなり異世界から来たなんて怪しい女を、他の人は受け入れてくれるだろうか?
信頼する人が言うから反対しないだけで、本当は迷惑なんじゃないだろうか。
……私をこの船に置くことで、彼らの信頼に傷をつけてしまわないだろうか。
「水琴」
考え始めれば途端に膨らんでくる悪い思考を破るように、上から静かに声が掛った。
見上げればあの優しい視線が水琴をじっと見つめている。
「聞かせてやれ、お前の想いを」
…なぜだろう。
この視線は、すごく落ち着く。
「……はじめまして。水琴と言います。船長さんが言うように、異世界から参りました」
大勢のクルーをゆっくりと見渡し、なるべく通るように、ゆっくりと大きな声で言葉を吐き出す。
意外にも、声は遠くまでしっかりと響いた。
「私のいた世界では、海賊も、冒険も夢物語の世界です。自分の身を守るために武器を持ったことも、宝の地図片手に未開の地を探検したことも私はありません」
彼らからしたらこの世界に住む一般人よりもひよっこだろう、赤ん坊レベルで役に立たないかもしれない。
元の世界とは大きく異なる世界。その世界でもより危険と言われる常識破りの新世界。
正直不安は大きく、どこか安全な島で彼らが持って帰ってきてくれる情報を待つのが私にも彼らにも一番いいのかもしれないとどこかで思ったりもした。
けど。
「…だけど、こんな怪しい私を迎え入れてくれたみなさんに、少しでも近付きたいと思っています」
ただ、怖いから、不安だからと遠ざけるのではなく。
受け入れてくれるのなら、私もまず歩み寄ろうと。
「__色々とご迷惑を掛けると思いますが、これからよろしくお願いします!」
深々と頭を下げる。
その頭に温かい手が触れるのを感じた。
「聞いた通りだ。
……新しい仲間に」
白ひげがゆっくりと盃を掲げる。
「「「「乾杯っ!!」」」」
歓声の代わりにあちこちでジョッキをぶつけ合う音が響き、場に喧騒が戻ってきた。