第26章 ローレン
「あと一発で落ちるんじゃない?」
「あー!そっちじゃない!」
追い打ちをかけようと撃つが弾が当たった反動でせっかく動いた位置が戻ってしまった。
もどかしさに思わずあぁぁ!と叫ぶ二人の後ろから「楽しんでるねぇ」と声が掛かった。
「イゾウ!」
「あれ、船番どうしたの?」
そこには船番でいるはずのないイゾウが立っていた。
「ちょいと野暮用で少しの間代わってもらったのさ。ところで何狙ってんだ?」
「あのテディベアなんだけど…」
「なるほどなぁ。ちょいと貸してみな」
「え、でももうあと一発しかなくて」
「一発ありゃ十分さ」
受け取った銃を構え引き金を引く。
イゾウの放った弾はテディベアの耳へと命中し、見事その巨体を地面へと落とした。
「イゾウすごい!」
「こんなもんさ。ほら、大事にしな」
「うわー!ありがとう」
念願のテディベアを受け取りぎゅっと抱きしめる。
それは想像通りふんわりと優しく水琴を受け入れた。
「で、わざわざ代わってもらってまで何の用なの?」
「あぁ、水琴にちょいとな」
「え、私?」
テディを抱きしめたまま首をかしげる。
「あぁ。水琴は今日の劇を観たかい?」
「ううん。観てないけど」
気になってはいたが、行ってみるともうすでにすごい人でとてもじゃないが観れる状況ではなかったため諦めて引き返したのだ。