第26章 ローレン
「お、水琴楽しんでるかー?」
「あっちに珍しいもんあったぞ」
観光客に交じって楽しむ白ひげクルーに返しながら、ハルタと水琴は時には船番の者への土産を吟味し、時には食べ歩きをしながら祭りを見て回っていた。
ふと水琴の足が止まる。
「ねぇねぇ。射的やらない?」
指さす先にはよく縁日で見るような射的の屋台。
覗いてみれば大小さまざまな景品が並んでいた。
「いいね!多く落とした方が勝ちね」
「絶対ハルタの方が有利じゃん!」
「俺だって普段は剣だから銃はあんまり得意じゃないよ」
お金を支払い銃を受け取る。よくあるおもちゃのコルク銃だ。
弾は全部で五発。慎重に狙う必要がある。
「ハルタお先にどうぞ」
「ありがと。でもそれって情報収集するためでしょ?」
「よくわかったね!」
「まぁいいけどね」
それじゃあ、とハルタが一つの的に狙いを定める。
狙ったのは並ぶ中でもひときわ大きな景品だ。
引き金を引けばコルクの弾は見事に的へ命中するが、重さに負けはじき返されてしまった。
「あちゃー、やっぱ無理か」
「重過ぎたみたいだね。よくあれを狙ったね」
「一番の難敵を狙わなきゃ男じゃないでしょ!」
男ではないので水琴は他の物を狙うことにする。先程のハルタのを参考に少し小さく、重心が不安定なものへ銃を向ける。
飛んでいったコルク弾は見事に景品を叩き落した。
「やった!見た見た?」
「見た見た。やるじゃん」
続けてハルタは他のものへ狙いをつけ見事に落とす。
「一番の難敵を狙わなきゃ男じゃないんじゃなかったの?」
「戦略的撤退も海賊には必要なんだよね」