第26章 ローレン
次の日。高く上がる月を見上げながら水琴はハルタと夜道を歩く。
昼の間にたっぷりと睡眠は取ったので夜ではあるが身体は元気だ。
「あ!見て見てあそこ昨日と違うお店になってる!ちょっと見てみない?」
「本当だ。日替わりなんだね。面白いなー」
五日もあるというから途中で飽きるんじゃないかと思っていた水琴だったが、なるほどこれならば飽きも来ない。
昨日とは違う露店から漂ってくる美味しそうな匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、水琴は溜息と共にエースやイゾウも来られたらよかったのにね、と呟いた。
「船番じゃしょうがないけど。あれ食べられないの悔しがるんじゃないかなぁ」
「ま、帰りにも残ってたらお土産で買って行ってあげればいいよ。あの様子じゃすぐ売り切れそうだけどね」
かなりの人気商品なのか、あっという間に行列ができる。
その様子を見て水琴は申し訳なさそうに眉を下げた。
「…なんか、私だけ船番ないの申し訳ないなぁ」
「サッチがいいって言ってたんでしょ?じゃあ気にすることないって。
水琴はいろいろ考えすぎなんだよ。ラッキーぐらいに思っとかないと」
「そういう風に考えられるんなら最初からこんなに悩んでないもん」
「はは、言えてる」
ハルタのあっけらかんとした物言いに少し心が軽くなるのを感じる。
はぐれないようにと手を引かれながら、水琴は夜の街を楽しんだ。