第25章 最古の物語が紡ぐもの
「そんなお話」
「へー。確かに月とか求婚とか似た単語はあるね」
「でしょ?だからちょっと思い出しちゃって」
「なァ、そろそろ他行こうぜ。腹減った!」
「あァはいよ。お前はほんと食い意地張ってるねェ」
騒ぐエースの一言で酒場でも探そうかと女神像の前を離れようとする。
ふと、水琴は足を止めもう一度女神像を振り返った。
そう、似ている。
女神の姿に、かぐや姫に似た面影を感じじっと見つめる。
竹取物語にはハルタ達には語っていないラストがあった。
かぐや姫が去った後、帝はかぐや姫から預かった不老不死の薬を駿河の国で一番高い山、富士山で燃やす。
不老不死。
同じ力を持つ、異世界の民の血肉。
竹取物語は、今でも謎に包まれている作者不詳の日本最古の物語だ。
__もし、そんな昔にも、この世界へ渡った人間がいたとしたら。
そして、元の世界に帰った者がいたとしたら?
それは伝説として、物語として、知らず伝えられていたのではないだろうか。
「……まさかね」
自分の中に生まれた考えを頭を振りそっとかき消す。いくらなんでも考え過ぎだ。
ワノ国の一件以来、どうも思考が偏っている気がする。
サッチが言う通り、この島にいる間くらい楽しもう。
そう思い直し、水琴は彼らの後を追う。
___でも、もし。
もし、天の羽衣が無かったら、かぐや姫はどうしていたんだろう。
行きたくない。帰りたくないと泣いたかぐや姫。
そんなかぐや姫の心は、一体どこへ消えてしまったのだろう。
その答えは、水琴の心の中と同様、きっと出ることはない。