第25章 最古の物語が紡ぐもの
「祭典?」
夏島へ上陸する準備を進めていた水琴は耳に飛び込んできた単語に思わず振り返る。
「そう。何でも今、島は特別な祭典の真っ最中なんだってよ」
荷物のチェックをしていたサッチがリストから顔を上げ水琴へと笑いかけた。
「ログが溜まるのに結構時間がかかるって話だし、祭典の間はこの島にいるらしいからパーっと楽しめるってもんだ」
「へー。祭典とか楽しそうだね。どれ位滞在する予定なの?」
「確か五日だったかな。
……だからよ、水琴ちゃん。この島にいる間くらいは、全部忘れて楽しんじまえよ」
優しい声音で告げるサッチに水琴は驚いて顔を上げる。
そんな水琴の様子は予想通りだったのか、優しく細められていた瞳はそのままにサッチは苦笑交じりに溜息をついた。
「気付いていないとでも思ったわけか?何があったか詳しくは知らないが、水琴ちゃんがずっと悩んでるのは今じゃモビー中が知ってるぜ」
うわぁと水琴は頭を抱える。
なんとなく、みんなが水琴に対して気を遣っているのは感じていた。
ワノ国で同胞の手紙を受け取ったことは、混乱を避けるため親父さんとマルコにしか報告していない。
それ以外で知っているのはあの場にいたエースとイゾウだけだ。