第25章 最古の物語が紡ぐもの
月にやんわりと照らされる、壁で区切られた白い海が頭から離れない。
__故郷へ帰る方法を探すため、この船に乗って約半年。
手掛かりを探しながら、ずっとこの日常が続いていくものと思っていた。
そんなことは決して、あり得ないのに。
唐突に目の前に現れた故郷の風景は、今まで曖昧にしていた水琴の心に一つの選択肢と共にずっしりと沈み込んだ。
__帰るか、帰らないか。
__帰りたいのか。残りたいのか。
「……分からない」
誰もいない、夜の甲板に水琴の声だけが小さく響く。
「分からないよ……」
矛盾する気持ちは、水琴の中で延々とせめぎ合う。