第24章 託された想い
湯呑を置き終わると喜助は庭へと続く障子を一杯に開く。
風がゆらりと湯呑から立ち上る湯気を揺らした。
「寒い日だった。年のくせに無理して働いてやがって。
結局この庭がじいさんの最期の仕事になっちまった」
そっとイゾウがここは銀蔵の代から続く庭師の家系なのだと補足する。
あの甘味処の庭も喜助が手掛けた物なのだと。
「そう…ですか……」
「じいさんは晩年、この庭の話ばかりしてたっけな」
__なァ喜助。見てみなさい。
__白い砂地は水を。石は島々を表す。まるでこの海のようじゃないか。
低くしゃがれた声をなぞる様に喜助は祖父との思い出を語る。
「……この庭には仕掛けがある」
庭から部屋へと視線を移し、喜助は水琴達を見下ろす。
「じいさんが最期の祈りを託した仕掛けだ。何か分かるか?」
「仕掛け……?」
「別に謎のスイッチ見つけろなんてもんじゃねェよ。よく見りゃ分かる」
そう言われイゾウとエースは縁側へと出てじっと庭を見つめるが、仕掛けが何かよく分からない。
「あんたはどうだい?」
一人部屋に座り込んでいる水琴へ喜助は声を掛ける。
その視線は何かを探る様に水琴へ向けられていた。
「____石の数」
その視線に応えるように、水琴は小さく正解を呟く。
「この庭には、全部で15の置き石があります。けれど、どこから見ても14個しかこの目で見ることは出来ない」
「___正解だ」
喜助の言葉にまじかよ?と呟きエースは再び庭を見つめる。