第24章 託された想い
__あんたがたどこさ 肥後さ
肥後どこさ 熊本さ
熊本どこさ 船場さ
__船場山には狸が居ってさ
それを猟師が鉄砲で撃ってさ
__煮てさ 焼いてさ 食ってさ
__それを木の葉でちょいと隠せ
「……やっぱり」
「通して聞くと結構エグイ内容だな」
「日本の童謡なんてこんなもんだよ」
中にはもっとすごいのもあるが、今は解説をしている場合じゃない。
「ねぇハルちゃん。その歌、どこで知ったの?」
「大じいちゃんに教えてもらったの」
「大じいちゃん?」
「ってェと、銀蔵さんか?」
「イゾウ。銀蔵ってのは…」
「あァ。喜助の祖父だ」
がらりとふすまが開く。
新しく淹れ直した湯呑を人数分乗せたお盆を手に喜助が部屋へと入ってきた。
「待たせたな。つーかハル。その歌歌うなって言ったろうが。子どもが歌うもんじゃねェぞその内容」
「だってお歌教えてって言われたんだもん」
「はァ?」
「すみません、私がハルちゃんに頼んだんです」
水琴と娘を交互に見て喜助は眉を寄せる。
「あんた、水琴だったか?うちの娘への用ってのはそのことか」
「はい。私の故郷の歌に似ていたので、気になって…怖がらせてしまってすみませんでした」
頭を下げればいい、と手で制される。
「で、疑問は解決したか」
「__ハルちゃんから聞いたんですけど、この歌は銀蔵さんから教えてもらったとか」
「あァそうだな。教えるならもっと可愛げのあるやつにしてほしかったぜ」
「…銀蔵さんは、今どこに?」
水琴の問いに喜助は目を伏せる。
「死んだ」