第24章 託された想い
次の日。もしかしたらまたあの歌を聴くことが出来るかもしれないと、朝から水琴は例の甘味処へ向かっていた。
「なァ水琴。今日はずっとあの店にいるつもりか?」
「うーん。少なくとも昼まではいようかなって。さすがにお昼は別の場所で食べたいし」
「そうだな。今日はソバっての食べてみてーな!」
「あ、いいね!どっかおいしい場所ないかなー」
付き合ってくれるエースと並び他愛ないおしゃべりをしながら歩を進める。
ちなみにハルタもついてきたがったが今日は船番の為しぶしぶ残った。
角を曲がれば甘味処のある通りに出るというところで、水琴はぴたりと足を止めた。
__てんてんてんまりてんてまり
鈴を転がすような歌声が響く。
声のする方を見れば、そこには少女が毬をつき遊んでいた。
少女の口から手毬唄が零れる。
「この声……昨日の歌の」
透き通るような声。
間違いない。
あの歌の主だと気付き、水琴は少女へと駆け寄った。
「__ねぇっ!」
はやる心のままに少女へ声を掛ける。
すると少女は一瞬驚き身を固めた後、一目散に走り去ってしまった。
「あ!!」
「馬鹿、見慣れない服装の奴がいきなり話しかけたらそりゃ逃げるだろ」
「あ、そっか」
うっかりしていた。ここでは水琴達は余所者なのだ。
鎖国し、外界の者と接する機会がない人間から見たらそれは怖いだろう。