第23章 懐かしき故郷の影
「……どこ……?」
「水琴!!」
追いついた三人が一人佇む水琴へ駆け寄る。
「急にどうしたんだよ」
「……ごめん」
「なんかあったの?」
「歌が……」
「歌?」
「私の世界の歌が、聞こえて…」
それで、と呟く水琴に三人は黙り込む。
「……似てるだけじゃないのか?この国と水琴の故郷は似てるって話だし、曲も似たようなのがあるかもしれない」
「ううん、違うよ。あの歌詞は絶対私の世界のものだと思う」
イゾウの言葉に水琴は首を振る。
もしも曲だけならば似ているで済ませたかもしれないが、あの歌詞は絶対に日本のものだ。
__あんたがたどこさ 肥後さ
肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ
船場さ
先程聞こえてきたフレーズを水琴が歌う。
「肥後とか熊本って言うのは私の国の地名なの。ワノ国にそんな所ないでしょ?」
「…確かに。聞いたことねェな」
「だから、歌い手が誰か知りたかったんだけど…」
既に歌は聞こえず、人影もない。
故郷の手掛かりを見つけたと思った水琴は肩を落とした。
「まァまだしばらくここにはいるし、明日探せばいいよ。今日はそろそろ戻らないと」
ハルタが空を仰ぐと、既に日は傾きかけていた。
戻らなければマルコが心配するだろう。
「そうだね」
気持ちを切り替え水琴は頷く。
「………」
「…エース?」
そのまま帰ろうと通りを戻りかけた水琴だったが、ふと黙ったままのエースが気になり声を掛けた。
「……あ?」
「どうしたの黙っちゃって」
「いや、別に……」
尋ねればばつが悪そうに口ごもり、視線を逸らす。
「そう?」
「___なァ、水琴」
呼ばれ水琴は首を傾げる。
そのまま問いを待つが、エースはなかなか口を開こうとしない。
「__なに?」
「………いや」
何でもねェ。とエースは目を細める。
「帰るか。マルコに説教されたらたまったもんじゃねェしな」
「う、確かに……」
マルコの説教は長い。
出来ればそう何度も受けたいものじゃない。
暗くなっていく通りを四人は足早に戻った。