第23章 懐かしき故郷の影
「ワノ国最高……」
「気に入ってもらえたみたいで嬉しきかな」
横でイゾウがくすりと笑う。
「この庭は俺の知り合いが作ったんだが、常連客からも好評でな。個人的な注文もよく受けてるっつってたなァ」
「有名なんだね。こんな庭が自分の家にあったら良いだろうなぁ…」
「おれはもう少し派手でもいいけどな」
「ワノ国特有だよね。ワビサビだっけ?」
「エースにゃこの繊細な感覚はわかんねェだろうなァ」
「馬鹿にすんなよイゾウ!」
ぷりぷりとむくれるエースに笑みをこぼす。
確かにエースには諸行無常だとかワビサビという雰囲気は似合わない。
でもそれでいいんだと思う。
「………?」
ふと何か聞こえた気がして、視線を庭へ移す。
よく聞こえなかったが、懐かしい歌が聞こえた気がした。
「水琴?」
どうした?と問い掛けるエースの言葉を背に庭へ下りる。
「なんか、歌が……」
じ、と耳を澄ます。
さわさわと風が葉を撫でる音としし落としの音以外おかしな音は聞こえてこない。
気のせいだったのだろうか。
やや落胆しながら水琴は縁側に並ぶ三人へ振り返る。