第22章 小さな家族
___カリ、
どれだけ過ぎた頃だろうか。静かな部屋に異質な音が響き、水琴はどきりと身を強張らせた。
音はドアの方からしている。
「…マ、マルコ……?」
__カリ
水琴の問いかけにもその誰かは返事をせず、ただ妙な音が響くだけ。
__カリ、カリカリカリ……
次第に増えるその音に、水琴の顔から血の気が引く。
「ぁ………、っ」
__カチャリ、と鍵が外側から開く音がした。
キィ、と静かに扉が開く。
「!!!」
***
モビーディックの船内はいつにもまして緊迫な空気が包んでいた。
空いている者達総出で船内の捜索が行われる。
「おい、そっち何かあったか?!」
「異状なしだ。甲板は?!」
「特に何もねェぞ。周辺の海にも怪しい影はないってよ」
「ったく、どこに隠れてやがる…」
影も形も見えない侵入者にげんなりとエースは呟く。
「厄介だなァ。姿が見えないってのは薄気味悪ィ」
隣でイゾウもその整った眉を潜める。
捜し始めてそろそろ一時間が経とうとしている。
いくら広い船内とはいえ、これだけの人海戦術で捜しているのに影も形も見えないというのはおかしい。
「もう逃げちまったとか?」
「資料室がいつ頃荒らされたのかにもよるな。夜だったらもういねェかもしれねェ」
ちっ、とマルコは舌打ちをする。