第22章 小さな家族
「遅かったな。資料あったか?」
「マルコ!それが……」
水琴は資料室の様子を説明する。
報告を聞いてマルコは眠たげな目を更に細めた。
「そいつは放っとけねェな」
がたりとマルコは席を立つ。
「ハルタ。隊長クラスに伝達しろい。業務についてる者はそのままで、空いてる奴らで船の詮索しろってな。密航者が乗りこんでいる可能性がある」
俺は親父に報告してくる、とマルコは部屋を出ていこうとする。
「あの、私は?」
「水琴はここにいろい。鍵はしっかり閉めとけよ」
「大丈夫、ちゃちゃっと終わらせてくるから」
それぞれ声を掛け、後には水琴だけが残される。
「大丈夫かなぁ…」
一人になると急に不安が押し寄せてきた。
しんと静まり返った部屋は水琴の中の不安を更に増長させる。
「もしかして能力者だったりなんてことは…」
忘れかけていた食糧庫荒らしの話を思い出す。
そういえばあれだって結局原因は分からずじまいだ。
もしかしたら、あの時からずっと誰かはこの船に侵入していたのかもしれない。
隊長にも船長にも、誰にも気づかれないように、ひっそりと。
そんなことが出来るのはかなりの実力者か、能力者に違いない。
一度生まれた不安はすぐには消えず、ただ悶々としながら水琴は時が過ぎるのをひたすら待った。