第22章 小さな家族
水琴の声がやけに大きく響く。
ごくり、と唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
背筋を冷たいものが伝う。
ぽん
「!!!!!」
背後から急に肩を叩かれ水琴は声にならない叫び声を上げた。
ばっと勢いよく振り向く。
そこには水琴の肩を叩いた状態そのままで固まるハルタがいた。
「ハ、ハルタ…!」
「何さそんな大げさに驚いて。びっくりしたー」
「びっくりしたのはこっちだよ!驚かせないで…」
「なんでそんな驚いてるわけ?」
問い掛けて、ハルタは水琴の背後の惨状に気付く。
あちゃーとハルタは呟くと、水琴へ視線を戻した。
「なに、やらかしちゃった?」
「違うよ!」
冗談冗談、とハルタは明るく笑う。
「しかしひどいねこれ。誰の仕業?」
「それが……」
水琴は軽く自分の考えを説明する。
「だから、正直誰がやったのかさっぱりで…」
「___ふぅん」
水琴の説明を聞き終えたハルタはさっきまでの表情はなりを潜め、偉く真剣な表情を浮かべている。
そしてそのままずかずかと資料室へ入っていった。
「え、ハルタ?!」
「水琴はそこに居て」
やや張り詰めた雰囲気を纏ったままハルタは声だけを水琴へ向ける。
しばらく奥の方へ消えていたハルタだったが、すぐに水琴のところへ戻ってきた。
「中は誰もいないみたい。だけどこれはちょっと問題かもね」
「え……?」
「だってここ資料室だろ?ここには俺達の情報が山ほどある。鍵も掛けてたこの部屋にこっそり侵入した奴がいるとすればそいつは密航者の可能性もあるよね」
「あ…!」
ハルタの言葉に水琴はぞくりと鳥肌が立った。
まさか白ひげ海賊団の船に密航する者がいるなんて考えもつかなかったが、海賊、それも四皇となれば敵だって多いに違いない。
あり得ない話ではない。
「ど、どうしよう…?」
「とりあえずマルコに報告だね。実際密航者がいるかはまだ分かんないけど、このまま放っておくわけにもいかないでしょ」
現場はそのままにして鍵を閉めると、水琴はハルタと共にマルコの元へ戻った。