第21章 記憶の中の赤
__いいか。この石は特別な力がある。くじけそうになった時、自信がない時、強く握れば途端に勇気が生まれる魔法の石だ。
目の前に揺れる赤い光がとても綺麗だった。
__自分が独りだと感じた時、どうしようもない現実に押しつぶされそうになった時、握って願え。前だけ見てろ。自分の幸せを掴みとれ。
ぐしゃりと大きな手でかき回される。
__…また会える?
__会えるさ。いつかきっとこの石が引き合わせてくれる。
だからそれまで、笑ってろよ。
「結局お礼に行こうとしたけど家も分からなくなっちゃって、それっきりだけど」
顔も名前も分からない。
それでも、私にとってはすごく大事な人だ。
「だからね。きっとこれを落としたらそれこそ必死になって探したと思うんだ」
もしかしたら見つかるまでこの島にいさせてほしいとマルコや親父さんに直談判しに行ったかもしれない。
「でもね。もし落としたのがこっちだったら、迷うことなくエースに声掛けて一緒に探してもらってたよ」
「……そうかよ」
黙って聞いていたエースが渋い顔をする。
「そう言われりゃ怒るに怒れねェじゃねェか」
「えへへ。…ねぇエース。これつけて」
青いペンダントを差し出し後ろを向く。
鎖の擦れる音と共に胸元に下りた青い光に満足そうに微笑む。
「うん、やっぱりこうじゃなきゃ落ち着かないね」
「次からは気をつけろよ」
「はーい」
怒られる前に船へ帰ろうと道を急ぐ。
水琴の胸には、元通り二つの光が揺れていた。