第21章 記憶の中の赤
口ごもる水琴にエースの気分はさらに下降する。
思い出すのは食堂での水琴の蕩けるような笑顔だ。
「__そんなにそれが大事かよ」
低く呟かれる言葉に水琴は顔を上げる。
「たかだかペンダントだろ」
「そんな…っ」
明らかにエースの言葉に傷ついた様子で水琴は声を荒げた。
「そんな言い方ないでしょ!確かにエースにとってはただのペンダントかもしれないけど、私にとっては大事なものなんだから!」
「十分な安全策も取らずに自分の身を危険にさらしてまでか?」
「大事だよ!だって、エースからもらったやつなんだから!」
「顔も覚えてない奴にもらった物なんて別に……え、おれ……?」
「……んん?」
はて何かがおかしいと二人目を合わせる。
エースはそのまま水琴の手に握られたペンダントを見た。
そこに輝くのは赤ではなく、透き通るような青い光。
「……おれのじゃねェか」
「だからそう言ったでしょ」
「なら余計放っとけよ!ただの島の土産のために危険な目にあってバカじゃねェか!」
「ただのお土産じゃないもん! エースが! 初めて! くれたものなんだから、代わりなんてないよ!」
一気に毒気が抜かれ肩を落とすエースを水琴が覗き込む。
「あァもうほんとこいつは……」
「エース……?」
「…ちなみに声を掛けていかなかったのは?」
「他の隊長の部屋は遠いし、エースの失くしたって本人に言うのも気まずくて…」
「だろうなそうだと思った」
はァ、と重いため息が漏れる。
通りの真ん中で何を言い合っているのだろう。
「とりあえず、帰るぞ」
小さく手を引けば大人しく水琴はエースの後をつき歩いて行った。