第21章 記憶の中の赤
「エース…」
「おい、こいつ白ひげの……!」
エースの背のマークに気付いた男が声を上げた。
その声に他の男もまた彼が何者か知り後ずさる。
「連れが迷惑かけたな。礼ならおれからするが、どうする?」
「い、いらねェよ!」
その一言をきっかけに男たちは散り散りに通りへと走り去っていった。
あ、と水琴はその背を追う。
「待って!ペンダント!!」
返事はなくペンダントだけ投げ返される。
それを慌てて拾い上げ水琴はようやく息を吐いた。
「よかった……」
「おい」
先程と同様のエースの言葉にぎくりと身体を強張らせる。
荒々しく怒気を振りまきながら水琴へ近づきエースはすうと息を吸い込んだ。
「この、馬鹿野郎がっ!!」
びりびりと肌を走る振動に目を瞑る。
「ここは親父の領土でも何でもない。昼でさえ単独行動は禁止されてるのに、よりによって夜出歩く奴があるか!何かあったらどうするつもりだ!」
「ごめんなさい……」
素直に謝ればエースも荒げていた声を若干落とす。
しかし水琴を見下ろす瞳はまだ許さないと強く訴えていた。
「明日サッチと探す約束してたんだろ。なんで出てきた」
「拾われたら、もう無理だと思って…」
現にあと少し遅ければ売り払われているところだった。
そのことを目撃したエースもその通りだと思ったのだろう。舌打ちとともに言葉を吐き出す。
「それでも、誰かに声を掛けて一緒に出るくらいは出来ただろ。近くにはおれの部屋もある。なんで一人で出てった」
「それは……」