第2章 始まり
ふと目を開ければ窓の外はオレンジに染まっていた。
向こうと時間が同じであれば、井戸へ落ちたのが午前11時くらい。
空の様子から、半日は経過していることになる。
大分熟睡してしまっていたことに、人間って結構図太く出来ているんだと見当違いな感心をした。
ぼやける頭を振り、髪を整えていると廊下を近づいてくる足音が聞こえた。がちゃりとドアが開かれる。
「と、悪ィ。寝てたのか」
「すいません、気が付いたら寝ちゃってて…」
「疲れてたんだろ、当然だ。それより始まるぞ!」
「え?」
何が?と首を傾げる水琴に対してエースが「宴だよ!」と急かす。
「気の早い奴らはもう始めてるからな。早くいかないと食いっぱぐれるぞ」
「え、そうなんですか?」
エースに連れられやってきたのは甲板。
そこではすでに多くのクルーが盛り上がっていた。
「もーエース遅いよー」
一つの集団から声がかかる。
そちらに目を向ければ何やら見知った顔がいくつか見えた。
周囲とは明らかに雰囲気の違うグループにまさか、と想いを巡らせる。
「悪ィ悪ィ。水琴、こいつらうちの隊長たち。で、ハルタ。こいつが水琴だ」
あぁやっぱり隊長さんのグループでしたか。
「へー君が水琴ね。エースに引っ張り出されちゃったんだって?災難だったねー」
「あ、よろしくお願いします」
輪の中から王子様チックの服装をした少年…少年?が出てきて手を差し出される。反射的にお辞儀しそうになった水琴は何とかこらえその手を握った。
それを皮切りに次々と隊長たちが挨拶をしてくる。
「ジョズだ。大変だったな。何かあればいつでも声を掛けろ」
「私はビスタ。戸惑うことも多いだろうが、みんな気の良い奴らだ。楽にすると良い」