第21章 記憶の中の赤
自分の物なのにお金を払わなければいけないことに納得できないが、背に腹は代えられない。今水琴は一人だ。ごねて暴力に訴えられたらまず勝ち目はない。
「おいくらですか?」
「あー、いいよいいよ。あんたのなんだろ?金を払う必要はねェよ」
財布を取り出せば男の一人がその手を押しとどめた。
真意が分からず目を上げれば男はにやりと笑う。
「金はいいからよ。俺らちょー寂しいわけよ。少し付き合ってくれよ、な?」
「え、あ……!」
ぐいと手を引かれる。反射的に手を引くが掴まれている腕はびくともしない。
水琴の必死の抵抗に男たちは獲物をいたぶるように下卑た笑みを浮かべていた。
「返してほしいんだろ?一晩付き合ってくれたら明日の朝には返すって」
「そんな暴れんなよ。飲みに行くだけなんだから別にいいだろ」
「困ります!私、帰らないと」
今までの経験からついて行けば終わりなことくらい分かる。
向けられる視線に生理的嫌悪感を覚え水琴は抵抗を続けた。
「いいのかよ?ペンダントはよォ」
「それは……!」
「あーうるせェな。おいこっち行くぞ」
「ちょ……!」
「おい」
問答無用で水琴を裏通りへ引きずり込もうとする男の肩を誰かが叩いた。
「あァん?」
「手ェ放せ」
ぎろりと睨む眼光に、睨まれた男は震え手を放した。
水琴は予想外の人物にどうしてと口内で呟く。