第21章 記憶の中の赤
「これ宝石だろ?細工師に高く売れんじゃねぇの?」
「ラッキーだったな」
げらげらと笑いながら交わされる会話に水琴は勢いよく振り向いた。
まばらに歩く人の中、向こうへ歩く数人の男たちの背が見えた。
「すみません!」
その手に見覚えのある物がぶら下がるのを見て咄嗟に駆け寄る。
「あの、すみません!」
「お、なんだよ」
突然目の前に飛び出してきた水琴に男たちは驚き足を止める。
「それ、私が落とした物なんです」
先頭の男の手に握られたペンダントを指さす。
「ずっと探してて…お礼はするので、返してもらえませんか?」
丁寧に頭を下げれば男たちは顔を見合わせた。
「そうは言われても、はいそうですかって簡単に渡せねェなァ」
「ほんとにあんたの物かも怪しいぜ。この島じゃ希少な石だからな」
予想していた通り一筋縄ではいかない様子に水琴は唇を噛んだ。
少々ガラの悪そうな様子に嫌な予感はしていたのだ。
酒の酔いの手伝いもあってかどうかしらないが、にやにやと笑いながら渡そうとしない様子に分かりました、と水琴は懐へ手を入れる。
「細工師に売るって言ってましたよね。私が代わりに買います」