第21章 記憶の中の赤
「どこだろう…」
最初は勇み足だった歩調も、見る場所が少なくなるにつれゆっくりとなっていく。
とうとう水琴は通りの真ん中で立ち止まった。
目の前には昼間入った食堂。
一番最後にペンダントを確認できたその店を前に溜息を吐く。
「なかった…」
ということは残るは閉まっていた店の中か、それか誰かに拾われたか。
前者ならまだいい。だが後者なら。
どうしようと水琴は立ち尽くす。
見つからなければ大人しく帰ろうと思っていた。
しかし、実際は足が動かない。
帰らなければ。でもダメだ。何かあってからじゃ遅い。けど見つける前に帰るなんてできない。
__だって。
だってあれは……
ぼうっと立ち尽くす水琴の前で扉が開いた。
どうやらその食堂は夜も酒場として営業していたらしい。
出てくる客の邪魔にならないよう慌てて横に飛びのくと、ガタイのいい男たちは酔っているのかふらふらとおぼつかない足取りで通りへと出ていく。
…何をしているのだろう。
我に返った水琴は肩を落とし踵を返した。
帰ろう。
どれだけ望んだって、これ以上ここにいても事態は変わらない。
せめて明日見つかるまで無事でありますようにと水琴は船への道を戻ろうと歩き出す。
「いやー、それにしても儲けたな」
不意に会話から漏れた声が耳に止まった。
なんとなく水琴は足を止める。