第20章 赤髪
次に会う時にその話は取っておくことにし、副船長が痺れを切らす前に船へ戻ることにする。
最後に良い女になれよ、と水琴の頭を撫でる。
「シャンクスさんは、それ以上良い男にならないでくださいね」
「ん…?」
「次会った時、断れなくなっちゃうんで」
受けるつもりなどないくせに、そう言って水琴は笑う。
「ほォ……」
なので少しいたずら。
くいっと手を引き寄せる。
体勢を崩した水琴の頬に唇を寄せた。
ちゅっ
軽いリップ音。
やけに大きく響いたそれに周囲のクルーが固まる。
「…次会った時は、覚悟しとけよ」
少し低い声で囁けば、水琴は小さく息を呑んだ。
目を白黒とさせる水琴に満足したシャンクスはじゃーな!と明るく手を振り船へ戻っていった。
「遅かったじゃねェか。今回は随分と話し込んだみたいだな」
戻った甲板でベンが手入れ中の銃を片手にシャンクスに声を掛ける。
「あぁ、ちょいと面白いもんを見つけてな」
「あァ…?」
くくく、と小さく笑うシャンクスに眉を吊り上げるが黙って船内へ戻っていくのを見送る。
「…そんなに気に入ったのかねェ」
まだ近いモビーディックの方を見上げる。
賞金首としては珍しい、“ONLY ALIVE”の手配書。
そこに写った、どう見ても普通の少女である“異世界の民”に想いを馳せる。
「さぁ出航だ!新しい冒険に出るぜ野郎ども!」
妙に機嫌のいい船長に、次会う機会があれば話してみようかとベンは加えていた煙草をくしゃりと潰した。