第20章 赤髪
「悪ィがいくら積まれようとまだ娘を嫁に出す気はねェなァ。
水琴、酌しろ」
「はいっ!」
親父さんにそう言われれば返事は一つしかない。嬉しそうに水琴は白ひげの元に駆け寄る。
その背後。
「__だそうだ。良かったなァ」
「何が言いたいんだよ」
さぁねェと意味ありげな視線をよこすイゾウにエースが眉を顰める。
シャンクスが水琴を誘った途端周辺の温度が上がったのは故意なのか無意識なのか。
エースの押し殺した返答ではどちらか判断するのは難しい。
「男ならはっきりしろってんだ」
「なんだよイゾウ」
「別に。エースはお子様って話だ」
「誰がお子様だ!」
食ってかかるエースにやれやれとサッチは肩をすくめた。
「…なんか、騒がしいですね」
「気にすんな。血が有り余ってんのさ」
「はぁ……」
***
楽しい時間は瞬く間に過ぎ。
シャンクスが船へ戻る時間となった。
甲板の端まで見送りに出る白ひげクルーを振り向き、全体を見回す。
そして目の前の水琴に目を合わせた。
「思いの他楽しい時間だった。ありがとな」
「こちらこそ、楽しかったです。またお話聞かせてください」
「うちにくればいくらでも話してやるけどな!」
「それはお断りします」
「だっはっは!」
異世界から来たという不思議な少女。
白ひげがバスターコールを発動させても尚取り返そうとした少女が一体どんな人物なのか気になって立ち寄ったが、予想以上に興味深いものだった。
半分冗談、半分本気で勧誘するが彼女の首は決して縦に振らないだろう。
それ位、彼女のこの船への信頼は篤い。
一体この世界に来てからどんなことを経験してきたのか。少し興味が生まれるが、残念ながらシャンクスもそうそう暇ではない。