第20章 赤髪
「いえ、別に気にしていないので大丈夫です」
「そんなに堅苦しくなるなよ。楽にいこうぜ」
「そーそー。そんなおっさんに敬語使う必要無いって」
「おっ……?!」
ハルタの言葉にショックを受ける。その様子が全くもって彼らしくて、四皇ということで少し緊張していた自分が馬鹿らしくなってくる。
「お、ようやく笑ったな」
水琴が微笑むのを見てシャンクスも笑顔を見せる。
「女の子は笑ってるのが一番ってもんだ」
いーねぇいーねぇと頷くシャンクス。
「やっぱ花があるだけで違うな。水琴、マルコと一緒に俺の船に乗らないか?」
「だから口説くんじゃねェよい!!」
とうとうマルコが切れた。
何というか…少し不憫。
しかし先程の異世界の民発言から、少し甲板の空気が痛い。
これはちょっとばかり奇をてらう必要があるかな、と水琴は一瞬考えを巡らす。
「…せっかくのお誘いですけど」
うん、これでいこう。
一度言ってみたかったんだ。
「家を出るのは、嫁に行くときと決めていますから」
にっこりと言い切る。
まさかそう返ってくるとは思っていなかったんだろう。シャンクスは一瞬目を丸くする。
「だぁーーっはっはっは!」
そして心底おかしそうに笑った。
「参った。そうか。嫁ね…そりゃあ諦めるしかないな」
「次は結納品持ってお越しください」
「かなり高くつきそうだな」
「なんせ白ひげの娘ですからね」
ぺろりと舌を出す。
「グララララ!大した奴だ!」
黙って見守っていた白ひげが笑う。
それをきっかけに甲板の空気はいつものものに戻った。
うん。こうじゃないと調子が出ない。
ぴりっと格好いいみんなももちろん好きだが、やっぱりこの落ち着いた雰囲気が水琴は好きだった。