第20章 赤髪
東の海時代の事もちょっとなら知ってるけど、さすがにそういうことは黙っておく。
「でもどうせなら名前で呼んでもらいたいもんだ」
……あれ、こんなキャラだったっけ。
まんま酔いどれ親父の様子に曖昧な笑みを浮かべる。
「…おい、ナチュラルに口説くのやめろよい」
「なんでだよ、可愛い子を口説くのは男の性だろ?!」
「だから見せたくなかったんだよい……」
マルコさんが苦々しく呟く。分かるよ、疲れるよね。
こういうのは本気に受け取ったら駄目なんだよ。
だけど私挨拶したはいいけどどうすればいいんだろう。
このままここにいるのはちょっとなぁ…
どうしようか悩んでいると壇上からエースが手招きするのが見えた。
これ幸いとエースへ駆け寄る。
隣へ座り、はァ…と大きな溜息をついた。
「…静かに様子見て、満足したら去るつもりだったのに……」
「お前気付かれてないと思ったのか?」
「気配を消すなんて高度なこと出来ないもん」
ひそひそとエースとやり取りをしていると視線を感じる。
振り向けば、シャンクスが面白そうに水琴を見つめていた。
「…なるほど、彼女が“異世界の民”ってわけだ」
ざわり
シャンクスの発した一言で甲板の空気が一気に変わる。
向けられる無数の殺気にシャンクスは動じることもなくおォ怖い怖い、と呟いた。
「心配しなくても捕って喰いやしねェよ。白ひげのとこに異世界の民がいるって噂が流れてきたからな。ちょっと気になってただけだ」
その口ぶりから本当に何も思っていないようだ。
ぐびりと盃を傾け、親父さんが静かに口を開く。
「言葉に気を付けるんだなハナッタレ。水琴は俺の娘だ」
「親父さん…」
親父さんの言葉に鼻の奥がじんとする。
“家族”になってまだ日は浅いが、彼らの気持ちは痛いほどに伝わってくる。
「あァ悪かった。水琴って言ったか。俺はシャンクス。気を悪くしたなら謝る」
にかっと子どものような笑顔を向けられ毒気を抜かれる。