第20章 赤髪
「……で、だ」
しばらく経った頃、シャンクスは盃を置く。
「さっきからこっちに熱烈な視線を送ってるお嬢さんは誰だ?白ひげ」
「「「…………」」」
「グラララ…やはり放っといちゃあくれねェか」
「あれだけ熱い視線を送られたら、男として見過ごすわけにはいかないだろ」
「…だ、そうだ」
出てきやがれ、と白ひげが声を掛ければキィ…と小さく音を立てて船内へ続く扉が開かれた。
隙間から気まずそうな水琴の顔が覗き、その場にいた隊長クラスは全員溜息を吐いた。
***
まさかばれるとは思わなかった。何気なく言われたシャンクスの言葉にどきりと心臓が跳ねる。
親父さんの様子から、きっとみんなにばれていたんだろうと思うと少し気まずい。
せめてこれ以上第一印象は悪くしないように、と水琴は丁寧に腰を折る。
「…お邪魔してすいません」
「へェ。こりゃまた可愛いお嬢さんだ」
現れた水琴を見てシャンクスは手招きをする。
覗き見していたことはあまり気にしていないようだ。
だけどこれ以上邪魔していいんだろうか。
ちらりと親父さんの方を見ると黙って頷く。
許可が出たと受け取り、水琴はおずおずと中央へ寄っていった。
シャンクスは完全に現れた水琴を一瞥し、ほぉ…と息を吐く。
「こんな可愛い子隠しとくとは白ひげも水臭いもんだ」
「誰が娘を簡単に見せるか。しかし見つかっちまったもんはしょうがねェ。水琴、挨拶しろ」
「…白ひげ海賊団クルーの水琴です。はじめまして赤髪さん」
「俺のことを知ってるのか。光栄だな」
「有名ですから」