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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第19章 二つの正義




 ***



 「水琴ちゃーん!無事?!」


 甲板に着くと真っ先にサッチが飛び出してきた。


 「はぐれたって聞いたから驚いたのなんのって…変な奴らに絡まれなかったか?」
 「うーん、ちょっと、ね…」


 曖昧に笑う。エースの方を見れば微妙な表情を浮かべていた。


 海軍大佐を助けたと言ったら、ちょっと面倒なことになりそうなので黙っておくことにする。



 「親父!島で海軍がうろついてる。早いとこ出た方がよさそうだ」
 「もう準備は出来てる。野郎ども!出航だ!」


 白ひげの一声で瞬く間にモビーディックは港を離れていく。






 段々と小さくなる島を水琴は甲板から見つめていた。




 「海賊だから、か…」




 スモーカーの言葉を思い出し、ふっと目を細める。



 「もし私が海軍に拾われてたら、仲良くなれてたかなぁ」


 ありえたかもしれない可能性の一つを思う。


 海賊とは異なる、それでもまっすぐな正義を持つ彼らと共に歩む道も、もしかしたら面白かったかもしれない。



 「……おい」


 いつの間にか隣にエースがいた。

 むすっとした顔を見ると、さっきの呟きを聞いていたのだろう。


 「残りたかったのかよ」
 「まさか」


 ふふ、とエースを見上げる。


 「私の家族は、白ひげ海賊団《みんな》だから」


 


 ありえたかもしれない可能性なんて、考えるだけ意味がない。




 今、私はここにいる。



 それで十分。




 「迎えに来てくれてありがと、エース」
 「あんま心配掛けんなよ」






 こつん、と頭を小突かれる。





 はーい、と返事をして水琴は再び島に目をやり、背を向けた。











 海軍と海賊。


 異なる二つの正義は、決して交わることはないが、きっと、最も近くに存在する平行線。


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